こんにちは、慶應付属中専門の塾講師・家庭教師のたくと( @tact_roadtokeio )です。
前回は、「慶應付属3中学を深く知る」というテーマで慶應普通部について見てみました。
というわけで、今回は慶應中等部について見ていってみましょう。
慶應中等部のことを何となくは知っているけど、実はまだよくわかっていないなーという方を想定して書いていますが、面接対策や入学志願書(志望理由)を書く際にかなり参考になるように書いているので、志望する予定の方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
では行ってみましょう!
慶應中等部の本質は「2つのキーワード」に集約される。
慶應中等部の本質を表す2つのキーワード
慶應中等部の本質は、慶應普通部と同様に2つのキーワードに集約されます。それは、
- 「教育一貫校」
- 「独立自尊」
の2つです。下で詳しく見ていきましょう。
実は、「付属校」とは呼ばないほうがいい。
さて、慶應中等部・慶應普通部・慶應湘南藤沢中等部の3校ですが、「慶應義塾高校や慶應大学の付属校」と思っている方も多いのではないでしょうか?このブログでも、便宜上「慶應付属3中学」と書いたりもしています。そして実際、形態的には付属校という形になっています。
でも、実は「付属校」とは呼ばない方がいいです。
慶應中等部のWebサイトの部長(≒校長)挨拶のところにも、以下のような記述があります。
中等部はこの慶應義塾の学校の一つで、男女共学の中学校です。慶應義塾では小学校から高校までの学校を「付属校」とは呼びません。「一貫教育校」と呼びます。みな、慶應義塾の伝統を受け継いでいますが、それぞれに創立の経緯が異なり、それぞれに特徴があるからです。
(「慶應中等部-部長挨拶」(2021年時点)より。)
言い換えると、「慶應義塾」という学校群があり、その中には小学校・中学校・高校・大学・大学院と様々な学校がある。そしてそれぞれの学校が、それぞれの教育理念をもって運営されている。だから、「慶應義塾高校・慶應義塾大学」の下に「慶應義塾中等部」があるということではなく、独立した学校として「慶應義塾中等部」がある、ということです。
そういう強い教育理念を持って慶應中等部は運営されているわけです。
なので、「慶應大学の付属校だから志望しました!」なんて言ってしまうのは、「おたくの学校の教育理念なんてよく知りません!でも志望します!」と言ってしまっているようなものです。
なので、「付属校」という文言であったり、そういった側面に惹かれているということは、面接で明言したり、志願書に書くことは避けるようにしましょう。
では、慶應中等部が大事にする教育理念とは? – 「独立自尊」
では、慶應中等部の教育理念とは何なんでしょうか?これも先ほどと同様に部長挨拶から読み取ることができます。
慶應義塾の創設は、幕末の1858年にさかのぼります。当時はまだ中津藩の若い藩士であった福沢諭吉が江戸築地の藩邸に開いた蘭学塾が発祥です。近代化を迎える激動の時代にあって、西洋諸国と伍するためには、国を支える一人一人の人間が真に「独立」していなければならないと福澤は考えました。新しい日本のスタート地点に立った福澤が掲げた「独立自尊」の理念は慶應義塾全体の教育の根幹です。
(「慶應中等部-部長挨拶」(2021年時点)より。)
中津藩というのは今でいう大分県周辺にあった藩ですが、大坂(大阪)に蔵屋敷を、江戸に藩邸を持っていました。(「ターヘル・アナトミア」を翻訳して「解体新書」を作った前野良沢なんかも中津藩出身です。)
その中津藩の江戸藩邸で福澤諭吉が開いた蘭学塾が、慶應義塾の起源です。
当時、ペリーが黒船に乗って日本に来たことで、日本は大きな転換期を迎えてました。鎖国していた日本が、海の外の国々と対峙しなくてはならない。そのために日本の国民一人一人が持たなくてはならない価値観が「独立自尊」でした。
その「独立自尊」を身をもって学ぶために福沢諭吉が作ったのが上記の蘭学塾であり、慶應義塾なわけです。
この「独立自尊」という教育理念(というよりは教育の根幹)は、慶應中等部にもかなり色濃く受け継がれています。だから、「~しなさい」という形の校則がありません。そして制服もありません。(式典用の基準服はあり。)
そしてもちろん、「独立自尊」を教育理念とする慶應中等部は、受験生にも「独立自尊」の精神を求めています。
そのため、入試問題においては、「独立自尊」の精神を持っている受験生は合格最低点に達することができ、「独立自尊」の精神を持ち合わせていない受験生は合格最低点に達することができないような問題構成になっています。
よく、「慶應中等部の問題は簡単だから高得点勝負!」なんて言って基本的な問題ばかり解かす塾・家庭教師の先生がいますが、これは実はかなり危険です。
なぜなら、慶應中等部の入試問題は、日頃の勉強の中で「自分の頭で考えているのか?」「そしてそれを日常的に手を動かしてやっているのか?」が点数に現れるようになっていまるからです。外見的には簡単、でも中身をちゃんと見てみるとかなり質が高い問題を出題するのが慶應中等部なんです。
なので、「基本的な問題を徹底的にやる」というやり方だと、(ボーダーラインの手前まではギリギリいけますが)実際に合格点に届く可能性は限りなく低くなってしまいます。慶應中等部が受験生に求めている方向と真逆に行ってしまっているのだから、当然といえば当然です。(この点については、以下の記事に算数についてのみですが詳しく書いているので、ご興味ある方はご参照ください↓)
というわけで、これから慶應中等部を目指すのであれば、各科目の学習云々の前に「独立自尊」の精神を培うことが必須となります。とはいえ「独立自尊」という言葉だけだと、具体的に何をすべきかなのかが不明瞭なので、「独立自尊」を因数分解して見てみましょう。すると、
- 「自分の頭で考え、判断すること」(思考の独立)
→親や先生に依存するのではなく、主体は自分であるという意識を強く持つことが求められています。 - 「自分の身をもって行動すること」(行動の独立)
→又聞きの情報で知識を増やすのではなく、行動を通して知的好奇心を満たし、本質的な知恵・知性を得ることが求められています。 - 「他者と調和しながら存在すること」(共存的独立)
→「独立」と「孤立」はまったく異なっており、福澤諭吉が求めるのは「他者との関係性が遮断された”孤立”」ではなく「他者と共に在る”独立”」です。言い換えれば、社会性をもった独立とも言えます。上記2つの思考・行動を自分勝手に行うのではなく、周りの環境との調和を踏まえて行えることが求められます。 - 「信念・価値観を獲得し、自己の人格を構築すること」(人格的独立)
→上記の思考・行動・社会性を通して自分自身の信念・価値観を獲得することができ、その結果として自己の人格が構築されていきます。自分をそのレベルまで自分自身で引き上げていくことが求められています。その際、自分の思考・行動によってもたらされる結果に対して、しっかりと自分で責任を持つこと(自責思考)が必要不可欠です。 - 「自分と他者を尊ぶこと」(自他に対する”自尊”)
→自分自身の思考・行動に責任をもって行った結果を尊び、胸を張って生きること、そしてそれと同時に他者が思考・行動に責任をもって行った結果に対しても自分に対するものと同等に尊ぶことが求められています。「自尊」とは、本質的には他者の尊厳を認めて初めて成り立つものです。
といった5つの要素に細分化することができます。
この5つを意識して生活することで、慶應中等部の求める人物像に大きく近づくことができます。少し細かく書いてありますが、ぜひしっかりと読み込んで、意識してみましょう。
では最後に、慶應中等部の学校概要を載せておきます。
ざっと目を通しておきましょう。
慶應中等部の概要
正式名称
慶應義塾中等部
設立
1947年(前身の慶應義塾商工学校は1905年)
所在地
東京都港区三田2-17-10
(JR山手線・京浜東北線「田町駅」から徒歩約15分)
(都営三田線・浅草線「三田駅」から徒歩約15分)
(南北線「麻布十番駅」から徒歩約15分)
(大江戸線「赤羽橋駅」から徒歩約25分)
共学・別学
男女共学
学期
3学期制
制服
なし。私服に中等部のバッジを付けるのみ。
ただし、式典や校外活動の際に着用する服はあり。(「基準服」と呼ばれています。)
進路(高校への進路)
男子は塾内3校(慶應義塾高校・慶應義塾志木高校・慶應義塾ニューヨーク学院高等部)の中から希望する学校に進学できます。
女子は塾内2校(慶應義塾女子高校・慶應義塾ニューヨーク学院高等部)の中から希望する学校に進学できます。
(※ 慶應義塾湘南藤沢高等部への進学は、2021年度新入生からできなくなりました。)
[2024年度卒業生の進学先]
〈男子〉
・慶應義塾高校:137人
・慶應志木高校:12人
・慶應NY:3人
・他校:2人
〈女子〉
・慶應義塾女子高校:94人
・慶應NY:0人
・他校:2人
[2018年度卒業生の進学先]
- 慶應義塾:121人
- 慶應義塾女子:92人
- 慶應義塾志木:14人
- 慶應義塾湘南藤沢:16人
- 慶應義塾ニューヨーク:2人
- 他校:3人
[2017年度卒業生の進学先]
- 慶應義塾:137人
- 慶應義塾女子:92人
- 慶應義塾志木:15人
- 慶應義塾湘南藤沢:3人
- 慶應義塾ニューヨーク:3人
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というわけで、今回はこのあたりで。
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ではでは、読んで下さってありがとうございました。
また次回、お会いしましょう!
「親子でみる中学受験面接ブック」
(声の教育社)